Notes 10,11,12
- 鳥 今雄
- 2011年11月13日
- 読了時間: 4分
Notes 10.
母が見せるこれから先の時間にたいする不安を、二つ返事で「まあ、まかせてよ」って、解消してあげられる自分になりたいのに、その準備すらまだ始められていないし、フラフラしたキャリアの中に、わたしはいる。
独身で、結婚を考えるような恋人もおらず、実家で暮らしているわたしには、近い将来両親を支えられるだけの経済的体力がたしかに必要だ。それはわかっている。
けれど、思う。両親のことばかり考えた人生を選択をしていくようになってしまったら、新鮮な水の流れのような希望に満ちたビジョンはなくなり、溜まっていく池のような停滞感を感じてわたしは犠牲者ぶってしまうかもしれないし、酷い時には鬱々とふさぎ込んでしまうかもしれない。
池には年月と共に苔が蒸していく落ち着いた美しさがあるけれど、生命力豊かに止めどなく流れて行く川のような、爽快な美しさはないのだ。
Notes 11.
同年代の子と話をすると、みんな同じような不安の中にいるとわかる。
両親からきつく要求されていて、プレッシャーで夜も眠れないという子がいたり、そんな会話で喧嘩ばかりという子もいる。うちの父は何も言わないし、母は時々本当に気持ちが弱った時だけ打ち明けてくるという立派な人たちだけれど、そんな ”親の不安” というものを解消できる経済的土壌も耕せておらず、また、不安をやわらげるように母の話を冷静に聞いてあげることすらできない自分を、今夜は本当に残念におもった。
母の不安を見るのが悲しかったし、すぐにどうにかしてあげることができない自分が不甲斐なくて、涙がこぼれたのだ。
もしかしたら、子供にとっていくつになっても最強の存在である親が、弱気になっているのを見るのが恐ろしかったのかもしれない。簡単に言うと、憧れの先輩の私服がダサかった時のショックに似ているし、幼稚園の時、お昼寝の時間に担任の美人先生が鼻くそをほじっていたのを目撃してしまった遣る瀬なさにも似ている。孫悟空にとっての最強の敵が謎の新キャラ ”ウーブ君” だった時の切なさにも似ている。
ヒーローには負けて欲しくないという子供じみた気持ちを、ついつい親には抱いてしまうけれど、いい加減そんな ”甘えた” から卒業しないといけないのだろう。
家の外ではそれなりに年相応な顔してるけれど、家に帰ればすぐさま末っ子だ。この2つのバランスをうまくつけていかないと、わたしはショーモナイ大人になってしまう。現状は黄信号だ。自覚せねば。
Notes 12.
『自立する=家を出る』というのはよく聞くけれど、女の子の場合はそうじゃないパターンも多いと思う。『結婚しないで実家にいて欲しい=一緒に生活をつくっていこう』と実親から願われるケースだってあるのだ。結婚しないで、は言い過ぎかもしれないけど、こういう将来の不安を考え始める夜はとても苦しくなってしまう。
どこの家庭も同じで、わたしの同年代だけの悩みじゃないともわかってるけれど、人生のオモテ部分ではない日陰の悲しさみたいな心細さと、みんなどうやって折り合いをつけていくのだろう。
一日二日ではどうにか解決できる不安ではないし、もしかしたら一生付き合って行かなければいけないのかもしれないけれど、川のように流れながら池の落ち着きも持てる人生を送れるように、『自分は ”何を仕事にして” オマンマを喰っていける人間なのか』というフワフワした疑問心にいい加減答えを出して、エンジンふかして頑張らなければいけないと思った。(それが長い人生の中で当座の方向性であったとしても、とにかくその時一生懸命に道を進む覚悟という意味で)
それは人それぞれ、『パン屋になる』ということかもしれないし、『誰かの奥さんになる』ということかもしれないし、『アルバイトから正社員になる』ということかもしれない。
なんであれ、わたしよ頑張れ。両親を守る経済力を持ちながら、フットワーク軽く自分の人生を謳歌できるようなカッコイイ30代を迎えろ。